大悲は小悲に寄り添う

昨夜のNHKクローズアップ現代「被災3000人のアンケート・震災の生きた記録」に感動。

父と母と娘が車で逃げようとした時、津波が襲って来た。
父が娘を乗せてエンジンをかけて出発しようとした時、乗り遅れた母が波にさらわれた。車は波に押されるように走り出していた。
母は「行け!行け!後を振り向くな!生きろよ~!」と叫んで、バンザイ、バンザイしながら流れて行った(文意)。

その場に居合わせなかった娘の母親がアンケートに答えた文章でしたが、お父さんとこの女性にはこのときの体験が悲痛な記憶として残り、ために両者には深い溝ができたとテレビのコメントは伝えていました。また、お嬢さんはそれ以来、自分で食べることができなくなったとも伝えています。バンザイを叫びながら離れていったお母さんは、その後ご遺体で発見されそうです。死んで悲しみ、生きて苦しむとはまさにこのことです。この苦しみをよくぞテレビで語ってくださいました。

わたしなどかけるべき言葉もありませんが、とにかく感動で胸がいっぱいになりました。生きるとは苦しみを抱えることです。その苦しみや悲しみに寄り添ってくださる大悲がなければ、たったひとりでこのつらい人生を生きていることと変わりません。世間では絆、絆と申しますが、家族や友人との絆も当てにならない状況だって生まれるということです。大悲は小悲にいつも寄り添うと思わずにおられません。